税理士として働くなかで、「もっと年収を上げたい」と感じたことがある方は多いのではないでしょうか。専門性の高い資格を持ちながらも、思うように収入が伸びないと悩むケースは珍しくありません。
この記事では、税理士の年収の全体像を簡潔に押さえたうえで、現職でのキャリアアップ、転職、独立開業という3つの選択肢について、それぞれ「具体的に何から始めればよいか」という実践的な行動ステップに焦点を当てて解説します。
2026.9.9
税理士として働くなかで、「もっと年収を上げたい」と感じたことがある方は多いのではないでしょうか。専門性の高い資格を持ちながらも、思うように収入が伸びないと悩むケースは珍しくありません。
この記事では、税理士の年収の全体像を簡潔に押さえたうえで、現職でのキャリアアップ、転職、独立開業という3つの選択肢について、それぞれ「具体的に何から始めればよいか」という実践的な行動ステップに焦点を当てて解説します。
目次
厚生労働省が実施した調査によると、税理士(公認会計士を含む)の平均年収はおおむね800万円台前半で推移しており、中央値はそれよりやや低い650万円程度と推計されています。ただし、この数字はあくまで勤務税理士全体を平均したものであり、年齢や経験年数、勤務先の規模、独立の有無によって実際の年収には大きな幅があります。年齢別・経験年数別・勤務先別といったより詳細なデータについては、以下の記事で詳しく紹介していますので、まずはご自身の立ち位置を確認したい方はあわせてご覧ください。
【参考記事】
税理士の年収はいくら?年収UPを狙うためのヒントとおすすめの転職先は?
https://taxcareer.jusnet.co.jp/contents/detail/tax_04_11
本記事では、こうした年収の実態を踏まえたうえで、実際に年収を上げていくためには何をすればよいのかという、より実践的な内容に絞って解説していきます。
税理士という同じ資格を持っていても、年収に差が生まれる背景には主に3つの要因があります。ひとつは勤務先の規模や業態です。大手税理士法人やBig4系列のファームでは案件の単価自体が高く、それに応じて給与水準も高く設定される一方、個人事務所では顧客単価が抑えられる分、給与も控えめになりやすい傾向があります。
もうひとつは専門分野の有無です。国際税務や事業承継、相続税務など高度な専門性が求められる分野に強みを持つ税理士は、単純な記帳代行や申告業務が中心の税理士と比べて、報酬交渉の材料を多く持つことになります。
そして最後に、独立開業しているかどうかという働き方の違いも大きく影響します。独立すれば収入の上限は理論上なくなりますが、その分、営業力や経営手腕が直接収入に反映されるため、成功と停滞の差が勤務税理士以上に開きやすいという特徴があります。
転職や独立に踏み切る前に、まず検討したいのが現職でのキャリアアップです。今の職場で年収を上げるためにまず取り組みたいのが、担当する顧客数や案件の難易度を引き上げることです。単に既存業務をこなすだけでなく、顧客から次の案件を任されるだけの信頼を積み重ねていくことが、昇給や昇進の評価につながります。
そのうえで意識したいのが、事務所内での「代えのきかない存在」になることです。国際税務や事業承継、医療法人税務など、事務所内でまだ手薄な専門分野を自ら引き受け、知識と実績を積み上げていくことで、社内での希少価値が高まり、給与交渉の際の説得力も増します。あわせて、後輩の指導やマネジメント業務に手を挙げることも、管理職への道を開く近道になります。
もし現在の事務所で成長の機会が限られていると感じるなら、所長や上司に対して自分のキャリアの方向性を率直に伝えることも大切です。明確な目標を示すことで、重要な案件や研修機会を任せてもらいやすくなります。
現職での成長に限界を感じた場合、転職は短期間で年収アップを実現しやすい選択肢です。ただし、やみくもに求人へ応募するのではなく、段階を踏んで準備を進めることが成功の近道になります。
最初のステップは、自分のこれまでの経験を棚卸しすることです。担当してきた業務の種類や規模、得意とする税目、マネジメント経験の有無などを整理し、自分がどのような案件で強みを発揮できるのかを言語化しておきましょう。この整理ができていないと、面接で自分の市場価値を的確に伝えることが難しくなります。
次に取り組みたいのが、職務経歴書のブラッシュアップです。単に担当業務を羅列するのではなく、「どのような課題に対して、どう工夫し、どのような成果につながったか」を具体的に書くことで、書類選考の通過率は大きく変わってきます。以下の記事にサンプルをご用意していますので、参考にしてください。
【会計事務所・税理士法人での職務経歴書の書き方とサンプル】
https://career.jusnet.co.jp/resume/sample/cv_tax-accountant/
面接の段階では、これまでの実務経験に加えて、転職後にどのような専門性を伸ばしていきたいかというキャリアビジョンを語れるようにしておくことが重要です。特にBig4税理士法人や大手法人を志望する場合は、語学力や国際案件への意欲を具体的なエピソードとともに伝えられると評価されやすくなります。
税理士事務所の転職面接で緊張しない準備方法 ~【チェックリストつき】面接が苦手でも自信を持って臨める具体的ステップ
https://career.jusnet.co.jp/tax/tax_resume_03.php
そして、こうした準備を一人で進めるのが難しいと感じたときは、税理士業界に精通したエージェントに相談するのも有効な手段です。エージェントは業界全体の給与相場や各事務所の内情を把握しており、自分の経験に見合った求人を紹介してもらえるだけでなく、書類の添削や面接対策のサポートを受けられる点もメリットです。
年収アップの手段としてよく挙げられるのが「専門分野を持つこと」ですが、実際にどう身につけていけばよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
●相続税務/日常業務のなかで相続案件に積極的に手を挙げることに加え、資産税に特化した研修や税理士会主催のセミナーへの参加が土台になります。
●国際税務/実務経験を積むだけでなく、英語力の底上げと並行して移転価格税制やクロスボーダー取引に関する知識を独学で補っていくアプローチが現実的です。
●事業承継やM&A/中小企業庁が公開している支援策や実務資料に目を通しつつ、社内外の勉強会に参加して事例を学んでいくことが近道になります。
いずれの分野でも共通して言えるのは、資格を取っただけで専門性が身につくわけではなく、実際の案件に継続的に携わりながら知識を更新し続ける姿勢が欠かせないという点です。専門性を武器にしたいのであれば、転職の際にその分野の案件を多く扱う事務所を選ぶことも、成長のスピードを左右する重要な要素になります。
独立開業は、税理士のなかでもっとも年収の伸びしろが大きい選択肢です。一方で、準備を怠ると開業直後の収入が会社員時代を下回ることも珍しくないため、事前の準備がその後の経営を大きく左右します。
まず押さえておきたいのが、開業初期の収支イメージです。事務所の賃料や会計ソフトの導入費用、広告費などの固定費を洗い出したうえで、軌道に乗るまでの数か月から1年程度は、売上が安定しない前提で資金計画を立てておく必要があります。勤務税理士時代からの貯蓄に加え、日本政策金融公庫の創業融資制度など、開業資金を確保する手段についても早めに調べておくと安心です。
次に重要なのが顧客基盤の確保です。ゼロから顧客を開拓するのは時間がかかるため、勤務税理士時代に築いた人脈や、前職の事務所から独立時に引き継げる顧客がいるかどうかが、開業当初の経営の安定度に直結します。独立を見据えているのであれば、勤務している段階から顧客との信頼関係を丁寧に築いておくことが、将来の資産になります。
集客の面では、ホームページやSNSでの情報発信、セミナーの開催、地域の異業種交流会への参加など、複数のチャネルを組み合わせて認知を広げていく必要があります。特に近年は、特定の業種や分野に特化した情報発信を行うことで、専門家としてのブランドを確立し、価格競争に巻き込まれにくい高単価案件を獲得している税理士も増えています。
こうした準備を段階的に進めることで、独立開業のリスクを抑えながら、年収の伸びしろを最大限に活かすことができます。
実際に、キャリアの選択によって年収を大きく伸ばした税理士の事例を紹介します。
安定した経営体制とワークライフバランスを求めて転職
(Y.Rさん・40代・男性)
転職前/樹脂メーカー・経理・年収550万円
転職後/資産運用会社・経理・年収670万円
税理士資格を持ち大手ゼネコンや大手監査法人での勤務経験を持つRさん。直近では樹脂メーカーの経理として働いていましたが、会社の経営状態に不安を感じ、経営基盤の安定した企業への転職を決意しました。小さなお子さんがいることから、残業が少なくワークライフバランスを実現しやすい環境も譲れない条件でした。金融関係の未経験分野への挑戦に不安を感じながらも、業界研究を重ねて面接に臨んだ結果、経営基盤が盤石な大手電鉄グループの資産運用会社への転職を実現することができました。
英語×将来のキャリアアップを見据えBig4のアドバイザリー業務に転職
(B.Hさん・30代・男性)
転職前/税理士事務所・国際税務コンサルタント・年収690万円
転職後/Big4税理士法人・国際税務コンサルタント・年収720万円
外資系クライアントや外国人居住者向けの国際税務を8年以上担当してきたB.Hさんは、税理士試験3科目合格(簿記論・財務諸表論・法人税)とビジネスレベルの英語力(TOEIC840)を武器に、これまでの専門性を活かしながらさらに職域を広げたいという思いからBig4への転職を決意しました。3社を並行して受けるタイトなスケジュールのなか、複数のBig4担当者が連携したサポートを受けながら、最終的に自分の意志で納得のいく法人を選び抜いています。
A:税理士の年収は、勤務する地域によって明確な差があります。一般的に東京や大阪といった大都市圏では年収水準が高く、地方になるほど低くなる傾向があり、これは主にクライアント企業の規模や報酬単価の違いから生まれています。
ただし地方であっても、特定の専門分野で強みを持つ事務所や地域で高い評判を得ている事務所では、都市部に引けを取らない収入を得ている税理士も存在します。また地方は生活費が低いため、年収が多少低くても実質的な生活水準は都市部と変わらない、あるいはむしろ高いというケースもあります。地域による年収差を考える際は、金額だけでなく生活費や通勤時間なども含めた総合的な視点で判断することが大切です。
A:税理士試験に全科目合格し登録まで済ませている場合と比べると、科目合格にとどまっている段階では任せられる業務の範囲が限られるため、年収の伸びには一定の制約があります。
ただし、科目合格者であっても実務経験を積み重ね、担当できる業務の幅を広げていくことで、着実に年収を上げていくことは可能です。特に、法人税や消費税といった実務で頻繁に使う科目に合格している場合は、実務での即戦力として評価されやすく、転職の際にも有利に働くことがあります。
A:同じ事務所で長く働いていると、業界全体の給与水準の感覚がつかみにくくなります。自分の市場価値を客観的に把握したい場合は、税理士業界に特化した転職エージェントに相談するのが効果的です。実際に転職する意思がなくても、現在の経験内容や専門分野を伝えることで、市場での評価を教えてもらえるため、現職でのキャリア戦略を考える際の参考にもなります。
5万人を超える会計士・税理士・経理職の実データを基にした年収診断
税理士の年収は、勤務先や専門分野、働き方によって大きく変わります。まずは全体像を把握したうえで、現職でのキャリアアップ、転職、独立開業という3つの選択肢のうち、自分の状況に合った道を見極めることが年収アップへの第一歩です。それぞれの選択肢には具体的に踏むべきステップがあり、思い立ってすぐに結果が出るものではありません。だからこそ、早い段階から準備を進めておくことが、将来の年収に大きな差を生みます。
自分のキャリアにとってどの選択肢が最適か迷ったときは、ジャスネットのエージェントへの相談も選択肢のひとつです。客観的な視点からのアドバイスが、今後のキャリアを考えるうえで貴重な指針となるはずです。