近年の税理士業界では、「医療特化」「相続特化」「開業特化」など、何かに特化した税理士事務所が急増しています。
これは多様化するニーズへ対応することが第一の目的です。その他にも専門性の向上を図ったり、他の税理士事務所と差別化を図ったりといった目的もあるでしょう。
それでは、特化型事務所に転職することで、転職者にどのようなメリットやデメリットがあるのか?
今回は、転職目線でお話ができればと思います。
2023.11.17
近年の税理士業界では、「医療特化」「相続特化」「開業特化」など、何かに特化した税理士事務所が急増しています。
これは多様化するニーズへ対応することが第一の目的です。その他にも専門性の向上を図ったり、他の税理士事務所と差別化を図ったりといった目的もあるでしょう。
それでは、特化型事務所に転職することで、転職者にどのようなメリットやデメリットがあるのか?
今回は、転職目線でお話ができればと思います。
目次
冒頭で様々な分野に特化した事務所が増加中と述べましたが、具体的にどのような分野に特化した事務所があるのでしょうか。
様々な特化型の事務所がある中、本章では、最も数の多い上位3分野についてお話ができればと思います。
近年で最も増加傾向にあるのは、この医療系といっても過言ではありません。
病院や個人経営のクリニック、歯医者や動物病院など、医療に関する分野に特化した事務所の総称です。
なぜ、医療系が最も増加傾向に見られるのか?それは少子高齢化等の影響を色濃く受けているからなのです。
高齢化が進めば比例して医療ニーズも高まります。
厚生労働省のまとめでは、令和3年から令和4年にかけて1年で700近くの医療施設が増加しています。
上記の理由から税理士事務所の顧問先も増加する仕組みです。
次に資産相続特化の事務所について。
相続の発生条件は、基本的に被相続人の逝去のタイミングです。
生前に相続人へ少しずつ遺産を贈与するケースもありますが、事業会社の法人税のように毎月決まった数が発生するとは限りません。
このように非定期に発生する案件を「スポット」とも呼称します。
相続税は法人税や所得税などと異なりその案件数の少なさから、同じ税理士の中でも得意・不得意が分かれます。
つまり、10人の税理士がいれば10通りの相続税申告額が発生するということです。国内に税理士は約8万に登録があります。しかし、年間の相続件数は令和3年で13万件。
税理士一人当たり、1~2件有るか無いか。年間を通じて相続税に携わることが無い税理士もいます。
また、税理士試験において相続税法は選択科目であり、必修科目ではありません。つまり、相続に詳しくない税理士もいるということです。
このような結果から資産相続は、相続に知見と実績のある税理士のもとに集まりやすくなるということです。
そして、少子高齢化の影響もあり相続件数は年々増加。こちらもニーズが高まっているということになります。
最後に多いのが、起業の支援をメインとする事務所です。
新たに会社を設立する場合、税理士が必要となります。
法人は、個人事業主より税金ルールが複雑化しており、素人が必要な税務書類を揃えるのは容易ではありません。そのために専門家が必要となるわけです。
会社の立上げから規模拡大まで、税理士と二人三脚で成長すれば事務所としてもコアクライアント(太客)になります。
経営者視点でも、立ち上げ期から苦楽を共にした税理士は、何かあった時に心強いものです。
このように、ニーズが多様化する中で一分野に特化することで高い専門性を誇るようになり、より質の高いサービスが提供できるようになります。
それでは、数ある特化型事務所を転職先に選ぶメリットとはなんでしょうか?本章では、転職することで得られるメリットやキャリアパスについてご紹介します。
「言わずもがな」と言われてしまうかもしれませんが、分野特化ということは、総合的に経験を積むより早くノウハウが蓄積されます。
手に職を付けたいと考える方にはオススメといえるでしょう。
事務所が濫立する税理士業界。飽和状態にある市場へ新たに足を踏みいれることは容易ではありません。
多くの事務所が、法人顧客をメインにサービスを提供しますが、専門性の高い事務所で経験を積んだ場合、他所と差別化を図ることができ、かつ分野によっては将来において安定性も確保できます。
(※これはケースバイケースです)
例えば、相続特化型事務所にて経験を積み、次の転職を考えた場合。
相続税経験のある人材を募集する税理士事務所からは、喉から手が出るほど欲しい人材になります。
事務所によっては、相場よりも高い年収提示を行うこともあり優位に働くこともあるのです。
相続や医療系など、一定の分野は今後。少子高齢化などの時代の変化も相まってニーズがさらに加速する可能性があります。
高齢化が進めば、その分病院やクリニックにかかる人口も増えるでしょう。相続件数も増加が見込めます。
ニーズが高まった際、その分野の経験が有れば転職しても独立しても「潰しが効く」といえるでしょう。
それでは逆に、デメリットはどのようなものが挙げられるでしょうか?
上記のメリット(3)で挙げた内容と重なりますが、専門特化ということは、その分野以外の業務経験は積めないということになります。
つまり、総合型や別分野の法人に転職する際は「未経験」という扱いになることもあります。
特化した経験は稀少ですが、なぜ「稀少」なのかを考えると、それを経験できる機会(求人案件)が少ないからということです。
「これから特化した経験を積みたい」「同じ分野の別の特化型事務所に転職したい」と考えても、地域によっては求人数が少ないこともあります。
特化型事務所は、比較的人口の密集する県庁所在地に多い傾向があります。
メリットでも挙げた将来性ですが、分野によっては今後ニーズが減少することが予想されるものもあります。
例えば、開業支援。上記で挙げた魅力ややりがいもありますが、少子化が進行することで将来的に起業数の減少に繋がるリスクがあります。
それでは最後に、特化した経験を積むことで将来的にどのようなキャリアパスがあるのか?をいくつかご紹介できればと思います。
最も代表例となるのが自身で独立開業することでしょう。
高い専門性があれば、早い段階から他社と差別化を図ることもできます。ただし、営業力も必要となるため金融機関や他士業などの太いパイプとなる「ソーシング元」の確保が必要となるでしょう。
特に相続などはこのソーシング元が無いと、案件終了毎に新規の営業が必要となります。
次に、同じ分野で特化した税理士事務所・税理士法人に転職してキャリアアップを目指す選択肢です。規模が変われば、また違った案件の対応ができることもあります。
また、経験を買われて年収アップや働き方改善に繋がることもあります。
上記デメリットの項で「専門特化ということは他の経験が無い」と述べましたが、総合型の法人にて、コア業務としては経験のある分野で働きつつ他の分野でも経験の幅を拡げていくという働き方もあります。
少数の事務所ではキャパシティ的に採用されることは難しいかもしれませんが、一定以上規模の法人であれば、そういったキャリア拡大の可能性もあるでしょう。
特化型事務所での経験はその後の道を大きく左右します。
メリットがあればデメリットもありますので、ご自身の経験や現状、将来の夢などもしっかりと棚卸をして、選択することをオススメします。
もし、自分ひとりで難しい場合は、転職エージェントに相談して解消に繋げましょう。